レポート「デンマークのPower-to-X戦略」日本語版
本レポート「デンマークのPower-to-X戦略」は、2021年12月にデンマーク政府が発表したPower-to-X戦略を日本語に翻訳したものです(日本語版監修:環境エネルギー政策研究所)。デンマークにおけるPower-to-Xの取組は、2019年に合意された2030年までのGHG排出70%削減の目標(1990年比)以来爆発的な進展を見せ、本戦略で言及されている通り、数多くの大規模プロジェクトが立ち上がり始めています。
レポート(日本語版)は、State of Greenの日本語サイトからダウンロード出来ます。
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70%削減目標達成の「ラストピース」
2030年までのGHG排出70%削減目標達成には、デンマーク全土、全セクターでの取組みが不可欠であることは明らかでした。デンマークでは長きにわたり、風力やバイオマスの活用を通して電力や熱供給の脱炭素化を進めてきましたが、そうした既存の取組みだけでは脱炭素化できないセクターが一定数残ります。例えば、船舶や航空等です。
こうした「削減困難な」セクターこそ、70%目標の達成にあたって避けられない壁であり、Power-to-Xの活用が期待される分野です。極めて野心的な目標を前に妥協の余地がないデンマークでは、様々な「色」を持つ水素の中でもグリーン水素のみに注力することとし、その最もコスト効率的な形での活用を追求します。
徹底的な科学的分析をもとに、重点分野を設定
本戦略の策定にあたっては、合計500ページを超える膨大な科学的分析をもとに、デンマークにおけるPower-to-Xの果たすべき役割を整理しました。エネルギー利用の脱炭素化には様々な選択肢があり、例えば自動車ひとつをとっても、電気、水素、さらにはバイオ燃料の利用も考えられます。こうした様々な選択肢を幅広く分析し、「どのエネルギー分野ではPower-to-Xが競争性を有する/有さないか」を整理することで、技術の発展と社会実装に向けて投資の最適化を目指します。
Power-to-Xはセクターカップリングの新たな結節点に
長期視野かつセクター横断的なエネルギー計画の策定を行う伝統を持つデンマークでは、Power-to-Xも未来のエネルギーシステムにおける重要な一要素として明確に位置付けています。具体的には、電力の余剰/不足(ないし電力価格の上昇/下降)に連動して電解プラントを柔軟に運用したり、電解プラントからの余剰熱を地域熱供給で活用するなどが想定されており、Power-to-Xはデンマークにおけるセクターカップリングの新たな結節点として重要な役割を果たすことが期待されています。